行動体力の低下について

行動体力の要素としては、体格や姿勢といった体の構造的な部分から、筋力や瞬発力、方向転換などをすみやかに行う「敏捷性」、運動を持続する能力「持久力」、「柔軟性」などが含まれています。

これらが低下すると、私たちが「体力低下」として連想しやすい典型的な現象が起こってきます。先ほどの例に出てきたような、筋力が落ちたなどの理由からキビキビ動けない(敏捷性)、走るとすぐ疲れてしまう(持久力)、反応が鈍くなる(瞬発力)などです。

これらの現象が現れてくると、運動そのものへの意欲の低下もともなうことがあります。また、運動、つまり動くことが億劫になれば、人と会う、新しいことへのチャレンジなどの意欲も低下してくることも考えられます。こうなると、物事に没頭する機会やリフレッシュの機会を失い、年齢的な老いとは異なる意味での活力の低下にもつながりうることが考えられます。

防衛体力が低下すると

一方で防衛体力の低下はと言うと、ウイルスなどの病原体と戦う体のシステムである免疫機能が低下したり、抵抗力が弱くなることが要因となります。

抵抗力とは、外部から心身に影響を与えて生命力・生活力の低下を起こすことを防ぐ、または、それらの低下を最小限にとどめようとする能力のことです。栄養不足や睡眠不足、疲れの蓄積などによって負荷がかかると、身体抵抗力の低下につながってしまうのです。

 

実際に、防衛体力には体温調節などのいわゆる自律神経によって健康な状態を維持する機能も含まれており、ストレスなどで自律神経のバランスが崩れることも防衛体力の低下に直結します。

体力は、行動体力と防衛体力をバランスよくつける必要がある

行動体力や防衛体力の低下する要因を見てみると、行動体力だけ、あるいは防衛体力だけをつけるだけでは不十分であるとも言えます。

例えば、重いものを持ち上げる筋力があっても、風邪をひきがちな体質では健康とは言えず、逆に早く走れないし瞬発力はないけれど、めったに病気にならない人もいるわけです。

理想はこれらの両方、つまり運動能力と健康を維持する能力が両立して初めて、「体力がある」と言えるのではないでしょうか。

 

何が原因で体力・身体抵抗力は低下するのか?

いったい何が原因で体力・身体抵抗力の低下は起こるのか、それは何と言っても運動不足です。私たち現代人は、電動自転車や電動キックボードなど、歩かずに済む手段が増えたことやロボット掃除機など便利な家電の普及より、つい楽をしてしまいます。リモートワークが推進されている近年では、テレワークが当たり前になり、出歩かなくなったために運動不足になっている人も。当然ながら、「体を動かさない」ことは体力低下の原因になるのです。

暴飲暴食や偏食によって、栄養バランスが崩れることも体力低下の原因になります。体がつくるべきエネルギーの材料が不足したり、寝不足、過労やストレスによって充分な休養が不足し疲れがとれない状態が続く場合も、翌日までにうまく疲労回復ができないことになり、抵抗力が低下していると言ってよいでしょう。

もう一つ大きな要因としてあげられるものは「加齢」です。一般的な傾向としては、体力テストで測られる体力・運動能力テストの記録は、女性は中学生頃、男性は高校生から成人頃をピークに加齢によって低下していきます。