運動の効果はからだの機能面によく表われますが、疾病に対しても効果があります。
健康的な体形の維持
体力、筋力の維持および向上
肥満、高血圧や糖尿病などの生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防
加齢に伴う生活機能低下(ロコモティブシンドローム)の予防
心肺機能の向上により疲れにくくなる
腰や膝の痛みの軽減
血行促進により肩こり、冷え性の改善
抵抗力を高める(風邪予防)
精神的な効果
思いっきり走った後に、爽快感や達成感などとても良い気分になった経験がある方も多いのではないでしょうか。このように運動をすると精神面にも様々な良い影響を及ぼします。
認知症の低減
不定愁訴の低減
気分転換やストレス解消
どのくらい運動したらいいの?
みなさんは普段どのくらい運動をしているでしょうか?人によって運動量は大きく違います。これから運動を始める、という方は以下を参考に運動量を調節してみてください。
今より1000歩多く歩く!
普段2000歩程度しか歩いていない人に対して「1日1万歩歩きましょう!」と目標を掲げても、達成するのは難しいでしょう。そこで日常生活の中で「今より10分多くからだを動かしましょう」という指針が厚生労働省より出されました。 10分多く動くということは歩数にすると約1000歩多く歩くということになります。たとえばエレベータではなく階段をつかう、少しの距離は自転車ではなく歩くなどすると、より歩数が多くなります。歩行以外にも電車では立つ、買い物はカートではなくかごを持つようにするなど少し行動を見直すことで10分多く動くことにつながります。無理をしないで自分にできることを考えてみると良いかもしれません。
また息がはずむような運動を30分以上、週2回行うことも提唱されています。ウオーキング、ランニング、サッカー、野球、テニスなど、どのような運動でも構いません。楽しく継続して行うことができる運動をみつけ、習慣化されることをおすすめします。
・運動習慣とメンタルヘルスの関係
調査によると、運動習慣のある人はない人に比べ、抑うつ度が低く、社会適応度が高く、1年後に抑うつになるリスクが半分であるとされています。また、適度な運動にはうつ病の改善効果があり、時に薬物療法と同程度の症状改善・再発予防効果があるという報告もあります。適度な運動習慣を持つことは、メンタルヘルスにも良い影響を及ぼすようです。
どうして運動が心の健康に良いの?
では、なぜ運動習慣がメンタルヘルスに良い影響があるのでしょうか。まだはっきりと解明されていませんが、運動によってβエンドルフィン幸福感を生む脳内伝達物質やセロトニン・ノルアドレナリン(うつ病に関係している脳内伝達物質)の分泌が促進されるからといった説があります。また適度な疲労感により緊張が解け、快適な睡眠がもたらされることも関係しているといわれています。
効果的な運動とは?
無酸素運動:重いウエイト・トレーニング、腕立て伏せなど→小さい筋肉に作用する
有酸素運動:歩行、軽いジョギング、水中歩行など→持久的に大きな筋肉に作用する
無酸素運動は筋肉が増え、エネルギー代謝はアップしますが、脂肪は燃焼しにくく、心臓にも大きな負担がかかります。一方有酸素運動は脂肪を燃焼し、心臓への負担が低い上に、生活習慣病の予防にも有効です。特にうつ病の予防・改善には、リズミカルに一定のリズムで身体を動かすような有酸素運動が効果的です。
リズミカルな運動の例としては、
ウォーキングやジョギング、ランニング
サイクリング
足踏みや腹式呼吸など
などがあります。
このうち、習慣化しやすく、達成感が大きい「ランニング」は、うつ病予防に適しているといわれています。
他の人はどのぐらい運動している?
では他の人はどのくらい定期的な運動を行っているのでしょうか。
「運動習慣」とは、国民栄養調査では「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている 」と定義されています。
運動習慣の始め方
日常生活で活動量を増やす一番簡単な手段は、歩行を中心とした身体活動を増加させるように心がけることでしょう。目安としては「一日一万歩」歩くことが理想です。平成26年の調査では、日本人の歩数の現状は、1日の歩数の平均は男性で7043歩、女性で6015歩であり、この10年ほど減少傾向にあります。まずは階段を使ったり、帰りに一駅歩くなど、「一日一万歩」に向けた最初の一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
習慣的に運動をすることは、生活の中で受けるストレスをリセットし、すっきりするという効果も期待できます。学生の頃に行っていたなじみのあるスポーツや、誰かと一緒に始められるもの、あるいは一人で楽しむもの等、ご自身にあった身体活動を選び、無理のないペースで始めてみてはいかがでしょうか。
ただし、目標タイムや勝敗を気にしすぎると、新たなストレスにつながってしまいます。心の健康のための運動習慣であることを意識し、楽しみながら行えるとよいでしょう。